売上急増企業との取引は安全?急成長の裏側で確認すべき5つのポイント
30秒でわかるこのコラムの要約
・売上が急増している企業が、必ずしも「安全な取引先」とは限りません。急成長によって資金繰りが悪化するケースもあります。
・売上高だけではなく、「なぜ売上が増えたのか」「利益やキャッシュも増えているのか」を確認することが重要です。
・特定の大口顧客や一時的な案件への依存によって、売上が急増している可能性もあります。
・事業拡大のスピードに、管理体制やコンプライアンス体制が追いついていない企業にも注意が必要です。
・取引額を大きくする前、新規取引を始める前には、財務情報だけでなく代表者、企業背景、取引状況、ネガティブ情報などを含めた取引先調査が有効です。
・企業防衛リスクサービスでは、企業を多角的に確認し、取引判断の材料となる企業調査をご提供しています。
「売上が伸びている会社だから安心」とは限らない
新しい取引先を選定するとき、多くの企業が確認する情報の一つが「売上高」です。
「ここ数年、毎年売上が伸びている」
「前年から売上が2倍になっている」
「急成長企業としてメディアにも掲載されている」
こうした企業を見ると、
「業績が良い会社なのだから、取引しても問題ないだろう」
と考えてしまうことがあります。
特に営業部門から、
「今勢いのある会社です」
「これからさらに伸びる会社なので、取引枠を広げたい」
「他社もどんどん取引を始めています」
と説明されれば、経営者や経理・財務担当者としても前向きに判断したくなるでしょう。
もちろん、売上の成長そのものは企業を評価するうえで重要な材料です。
しかし、信用判断という観点では、「売上が増えている」という事実だけでは不十分です。
なぜなら、企業の売上が急増するときには、同時に別のリスクが発生している可能性があるからです。
例えば、急激な事業拡大によって人員を大量採用している。
大量の商品を仕入れている。
新規拠点を次々と開設している。
広告費を大幅に増やしている。
大型設備への投資を行っている。
このような企業では、売上が増えていても、それ以上のスピードで資金が外部へ流出していることがあります。
つまり、
「売上は増えているのに、お金がない」
という状態です。
企業間取引で重要なのは、売上の大きさそのものではありません。
取引先が、
「契約通りに支払いを続けられるか」
「安定して事業を継続できるか」
という点です。
だからこそ、売上が急増している企業との取引では、通常の企業以上に「急成長の中身」を確認する必要があります。
本記事では、経営者や経理・財務担当者が確認しておきたい5つのポイントをご紹介します。

1.「なぜ売上が増えたのか」を確認する
まず確認したいのが、「売上増加の理由」です。
売上が前年から50%増えた企業があったとします。
数字だけを見れば、非常に魅力的な企業です。
しかし、その増加がどのように生まれたのかによって、信用評価は大きく変わります。
例えば、
・新商品の販売が好調だった
・新規顧客が継続的に増えている
・既存顧客からの受注額が増えている
・新しい地域へ事業を展開した
・新規事業が軌道に乗った
といった理由であれば、比較的健全な成長と考えられるでしょう。
一方で、
・一社の大口取引によって売上が急増した
・単発の大型案件を受注した
・M&Aによって売上だけが増えた
・低利益の商品を大量販売している
・過度な値引きによって受注を増やしている
といったケースでは、慎重な判断が必要になります。
特に注意したいのが、「特定の取引先への依存」です。
例えば、年間売上10億円の企業のうち、4億円が一社からの売上だったとします。
この場合、その取引先との契約が終了するだけで売上の40%を失うことになります。
現在の売上だけを見れば優良企業でも、取引構造としては非常に不安定です。
売上が急増している企業ほど、
「どこから売上が生まれているのか」
まで確認する必要があります。
2.売上ではなく「利益とキャッシュ」を見る
売上が増えているからといって、会社にお金が残っているとは限りません。
企業経営では、「黒字倒産」という言葉があります。
帳簿上では利益が出ていても、手元資金が不足し、仕入代金や給与、税金などを支払えなくなる状態です。
特に急成長している企業では、このリスクが高まる場合があります。
例えば、ある企業が毎月1000万円の商品を販売していたとします。
事業が急成長し、翌年には毎月3000万円の商品を販売するようになりました。
売上だけを見ると3倍です。
しかし、それだけ商品を販売するためには、当然ながら仕入れも増えます。
さらに、
・営業担当者を採用する
・倉庫を広げる
・オフィスを移転する
・広告費を増やす
・設備投資を行う
といった支出も発生します。
売上代金が入金されるまでに2か月かかる一方、仕入代金は1か月後に支払わなければならない場合、急成長すればするほど、一時的に必要な資金は大きくなります。
つまり、
「売上が増えるほど資金繰りが苦しくなる」
こともあるのです。
取引先を判断するときには、売上高だけを見るのではなく、
・営業利益
・経常利益
・利益率
・現預金
・借入金
・自己資本
・売掛金
・買掛金
・資金調達の状況
なども合わせて確認する必要があります。
特に、
「売上は大幅に増えているのに利益率が急激に低下している」
「売掛金だけが急増している」
「短期借入金が急増している」
といった変化には注意が必要です。
企業の信用力を見るうえでは、
「いくら売っているか」
よりも、
「その売上によって、どれだけ利益と現金を残せているか」
を見ることが重要です。
3.急成長を支えている取引先・事業モデルを確認する
急成長企業を見る際には、
「誰と取引している会社なのか」
という視点も重要です。
企業は単独で存在しているわけではありません。
仕入先、販売先、業務委託先、代理店、投資家など、多くの企業や人物との関係によって事業を運営しています。
そのため、本人企業だけを調べても、リスクが見えてこないことがあります。
例えば、一見すると急成長している企業でも、
・販売代理店の一部に問題のある企業が含まれている
・主要取引先について重大なトラブルが発生している
・経営者の過去の事業で問題が起きている
・関連会社との不透明な取引が存在する
こうしたケースも考えられます。
特に新興企業や急成長企業の場合、営業拡大を優先するあまり、取引先の選定基準が十分に整備されていないこともあります。
「売上を伸ばすため、とにかく代理店を増やしている」
「紹介された企業とは基本的に取引している」
といった企業では、取引ネットワークの中にリスクが入り込む可能性も高くなります。
自社がその企業と取引を開始すれば、間接的にそのネットワークと関係を持つことになります。
そこで確認したいのが、
・主要取引先
・販売チャネル
・代理店構造
・関連会社
・代表者の過去の事業
・主要役員
・資本関係
などです。
企業調査では、
「その会社単体がどう見えるか」
だけではなく、
「どのような企業や人物とつながっているのか」
という視点も重要になります。
4.事業拡大に管理体制が追いついているか
急成長企業におけるもう一つの重要なリスクが、
「組織の成長スピードに管理体制が追いつかない」
という問題です。
売上が1年間で2倍になれば、通常は業務量も大きく増加します。
社員数も増えるでしょう。
取引先も増えます。
契約書も増えます。
請求書も増えます。
扱う個人情報や機密情報も増えます。
ところが、企業規模が急激に拡大しているにもかかわらず、内部管理体制が創業時のままという企業も少なくありません。
例えば、
・経理担当者が一人しかいない
・契約書を営業担当者が独自判断で締結している
・取引先審査のルールがない
・経費承認の仕組みが整っていない
・内部監査部門がない
・コンプライアンス担当者がいない
・情報管理ルールが十分ではない
といった状態です。
こうした企業では、最初は問題なく事業が運営できていても、組織規模が大きくなるにつれて、
不正会計、横領、情報漏えい、取引トラブル、労務問題、ハラスメントなどのリスクが高まる可能性があります。
特に創業者や社長への権限集中が強い企業では注意が必要です。
例えば、
「社長だけが銀行口座を管理している」
「大型契約でも社長の判断だけで決まる」
「役員会が実質的に機能していない」
といった企業では、企業としてのガバナンスに問題を抱えている可能性があります。
売上成長を見ると同時に、
「会社として管理できる規模を超えていないか」
を見ることも重要なのです。
5.経営者や企業の「過去」を確認する
新しい会社や急成長企業を調べるとき、
「設立からまだ数年なので情報が少ない」
というケースがあります。
ここで、
「情報が出てこないから問題ない」
と判断するのは危険です。
会社としての歴史が短くても、代表者や役員には当然ながら過去があります。
例えば、
・以前経営していた会社が短期間で倒産している
・過去の企業で顧客との重大なトラブルがあった
・何度も会社名や事業内容を変更している
・短期間で複数の法人を設立・閉鎖している
・過去の事業をめぐる訴訟やトラブルがある
こうした情報は、現在の企業名だけをインターネット検索していても見つからない場合があります。
企業のホームページには、基本的に企業側が掲載したい情報しか掲載されません。
会社概要には、
「設立〇年」
「売上〇億円」
「社員数〇名」
「全国展開」
といった情報が並んでいても、その背景までは分かりません。
信用判断で重要なのは、
「現在どのように見えるか」
だけではなく、
「これまでどのような事業活動をしてきたか」
です。
そのため新規取引では、法人情報と併せて、
・代表者
・役員
・関連会社
・過去の企業活動
・報道情報
・訴訟やトラブルに関する情報
・コンプライアンス上の問題
などを多角的に確認することが有効です。

「売上前年比200%」という数字だけで与信枠を増やしていないか
特に経理・財務担当者に注意していただきたいのが、
「営業実績が良いから取引限度額を引き上げたい」
という社内申請です。
例えば、これまで月100万円だった取引額を、営業部から、
「相手企業の売上が大幅に伸びているので、月500万円まで増やしたい」
と言われたとします。
営業上は合理的な提案かもしれません。
しかし、売掛取引の場合、自社が負う信用リスクも5倍になります。
もし相手企業が倒産すれば、売掛金の回収が困難になる可能性があります。
そのため、
「売上が伸びているから限度額を上げる」
のではなく、
「信用力を再確認したうえで限度額を判断する」
というプロセスが重要です。
取引開始時に一度調査した企業であっても、数年後には状況が変わっている可能性があります。
代表者が変更されている。
株主が変わっている。
主要取引先が変わっている。
借入金が増えている。
事業モデルが変わっている。
関連会社が増えている。
このような変化があれば、当初の信用判断がそのまま通用するとは限りません。
特に、
「急激に取引額を増やすとき」
は、取引先を再確認する一つのタイミングと考えるべきでしょう。
「急成長=危険」ということではない
ここまで読むと、
「急成長している企業とは取引しない方がいいのか」
と思われるかもしれません。
もちろん、そういうことではありません。
成長企業との取引には大きなメリットがあります。
相手企業の成長とともに自社の売上が増える可能性があります。
早い段階から関係を構築することで、長期的な取引につながることもあります。
新しい市場やビジネスへ参入するきっかけになるかもしれません。
重要なのは、
「成長しているから取引する」
でも、
「新しい会社だから取引しない」
でもありません。
必要なのは、
「リスクを確認したうえで取引条件を決める」
ことです。
例えば、調査の結果、
「成長性は高いものの資金繰りには注意が必要」
と判断した場合、
・取引限度額を低めに設定する
・前払いを一部求める
・支払サイトを短くする
・一定額以上は経営層の承認を必要とする
・定期的に信用状況を確認する
といった方法でリスクをコントロールすることができます。
企業調査の目的は、
「怪しい企業を探すこと」
だけではありません。
取引条件を適切に設定するための情報を集めることも重要な目的です。
無料のインターネット検索だけで十分なのか
新規取引先について、担当者がGoogleやSNSで企業名を検索している会社も多いでしょう。
もちろん、インターネット検索も重要な調査手段の一つです。
しかし、
「検索して特に悪い情報が出なかった」
というだけでは、十分な信用判断とはいえません。
インターネット検索では、企業側が公開している情報や、検索エンジンに登録された情報が中心になります。
企業名が変更されている。
過去の法人名で問題が発生している。
代表者が過去に別法人を経営している。
関連会社側でトラブルが起きている。
こうした場合、現在の会社名だけを検索しても情報を把握できない可能性があります。
また、検索結果をどこまで確認するかも担当者によって変わります。
一人は1ページ目まで確認する。
別の担当者は3ページ目まで確認する。
ニュース検索まで確認する担当者もいれば、通常検索だけで終わる担当者もいる。
これでは、社内の取引先審査基準が安定しません。
取引先調査は、
「担当者の検索能力」
に依存させるのではなく、
一定の基準に沿って実施できる仕組みを作ることが重要です。
経営者・経理担当者こそ「売上以外」を見るべき
営業部門にとって、成長企業は魅力的な顧客です。
しかし、経営者や経理・財務部門には別の役割があります。
それは、
「売上を作ること」
だけではなく、
「売上を確実に回収すること」
です。
1億円売っても、1億円回収できなければ利益にはなりません。
そのため、新規取引では、
「この会社からどれだけ売上を作れるか」
と同時に、
「この会社と安全に取引を続けられるか」
を確認する必要があります。
特に、
・初回から取引金額が大きい企業
・前年から売上が急増している企業
・設立年数が浅い企業
・短期間で社員数が増えている企業
・積極的にM&Aを行っている企業
・新規事業を次々と始めている企業
・代表者の影響力が非常に強い企業
・ホームページ上の情報が少ない企業
については、通常以上に慎重な確認を行う価値があります。
取引前に確認したいチェックリスト
売上急増企業との取引を検討するときには、最低限、次のような項目を確認しておくとよいでしょう。
【企業情報】
□ 設立年月
□ 資本金
□ 事業内容
□ 本店所在地
□ 代表者
□ 役員
□ 株主・資本関係
□ 関連会社
【業績】
□ 売上高の推移
□ 売上増加の理由
□ 営業利益
□ 経常利益
□ 利益率
□ 借入状況
□ 資金調達状況
【取引構造】
□ 主要販売先
□ 主要仕入先
□ 特定企業への依存度
□ 代理店構造
□ 継続的な売上か、一時的な売上か
【企業リスク】
□ 過去のトラブル
□ 報道情報
□ 訴訟情報
□ 行政処分等の情報
□ コンプライアンス上の問題
□ 代表者・役員に関するリスク情報
もちろん、すべての企業について同じレベルの調査を行う必要はありません。
取引金額や支払条件、事業上の重要度に応じて調査の深度を変えることが現実的です。
例えば、
「100万円未満」
「100万円以上1000万円未満」
「1000万円以上」
など、想定損失額に応じて調査基準を設定する方法もあります。
重要なのは、
「営業担当者が大丈夫だと言っているから」
「有名な企業と取引しているから」
「売上が伸びているから」
という理由だけで判断しないことです。
急成長企業との取引こそ、事前の企業調査を
企業間取引では、相手企業の将来を完全に予測することはできません。
どれほど慎重に調査しても、将来的な倒産やトラブルを100%防ぐことは不可能です。
しかし、
何も確認せずに取引を始める場合と、
事前に企業情報を多角的に確認したうえで取引条件を設定する場合とでは、
リスク管理の水準は大きく異なります。
特に急成長企業は、
「成長企業だから安心」
という印象が先行しやすい存在です。
だからこそ、
売上の数字だけではなく、
「なぜ成長しているのか」
「利益は残っているのか」
「資金繰りは問題ないのか」
「誰と取引しているのか」
「組織管理は追いついているのか」
「代表者や企業の過去に問題はないか」
という視点が欠かせません。
企業防衛リスクサービスの取引先調査
企業防衛リスクサービスでは、新規取引や重要取引の判断材料として活用いただける企業調査をご提供しています。
企業の表面的な売上高やホームページ情報だけではなく、企業背景や代表者・役員、関連情報などを含め、取引判断に必要な情報を多角的に確認します。

例えば、
「新規取引を始めたいが、本当に信用してよい企業なのか判断できない」
「営業部門から取引限度額を増やしたいと言われている」
「急成長している会社だが、情報が少なく不安がある」
「経営者や関連会社についても確認したい」
「Google検索だけの取引先チェックでは不十分だと感じている」
といった場合に、第三者による取引先調査を活用することで、社内の判断材料を増やすことができます。
取引先調査は、取引を断るためのものではありません。
安全に取引を始め、適切な取引条件を設定し、長期的な取引関係を築くためのリスク管理です。
売上が急増している企業ほど、
「勢いがあるから大丈夫」
ではなく、
「勢いがある今だからこそ、一度確認する」
という視点を持つことが重要です。
新規取引、大口取引、与信限度額の見直しなどをご検討の際は、企業防衛リスクサービスの企業・取引先調査をご活用ください。
企業の成長性だけでなく、その成長を支えている背景まで確認すること。
それが、自社の売上と利益を守るための企業防衛につながります。