コラム

Column

見破ることが出来た地面師たち

2024年11月21日

日本信用情報サービス株式会社

情報分析部

関口美由紀

Netflixで配信中の『地面師たち』は、ご覧になったでしょうか。

 原作は、新庄(しんじょう)(こう)氏の小説『地面師たち』(集英社)。大根(おおね)(じん)監督・脚本による配信ドラマでは、「地面師」たちがプロフェッショナルな犯罪組織として、リアルかつ華麗に描かれています。不動産をめぐった詐欺師たちの巧妙な手口とバイオレンスさに、衝撃を受けた方も多いのではないかと思います。

 地面師とは、不動産に関連する詐欺師の一種で、土地や建物の所有者に成りすまし、取引を行う犯罪者です。司令塔となる地面師を中心に、司法書士や弁護士、不動産業者など、専門家を装う人物も含めたグループで組織化され、それぞれの役割分担の元、偽の書類を用いて所有権を主張し、不正に土地を売却する手法を取ります。

 この作品は、日本で実際に発生したいくつかの「地面師詐欺事件」がモチーフとなっています。

 始まりは2016年、東京・新橋で起きた、資産家女性白骨化遺体事件。資産家である60代の被害者女性は地面師グループに拉致され、逃げ出したものの自宅に帰り着くことはなく、そのまま行方不明となってしまいました。その間に被害者の持ちビルが何度も不正に転売され、登記も書き換えられ……。 不動産取引の首謀関係者らが完全に姿を消した後、被害者のご遺体が自宅と隣家のわずか45cmの隙間で、白骨化して発見されたのです。ひとりの人間が謎の死を遂げ、十数億円が消えたこの事件、その真相はいまだ未解決となっています。

 そして、物語の軸ともなっている、2019年に実際に起こった『積水ハウス地面師詐欺事件』。記憶にも新しいこの事件は「地面師」という耳慣れない言葉と、誰もが聞いたことのある大手企業「積水ハウス」が、詐欺によって数十億円以上の大金を奪われるという衝撃的な事件でした。

 「積水ハウス地面師詐欺事件」の発端は、ある地面師が積水ハウス社の担当者に偽の土地所有者として接触し、土地の売却を持ちかけたことでした。地面師たちは、詳細な偽造書類を用意し、積水ハウス社の担当者を欺くことに成功します。実際は、ドラマのように華麗に、という状況ではなくかなりギリギリ、というより「なぜ気づかなかったのか?」と思うほど、突っ込みどころ満載の取引だったようです。

 しかしその手口に、積水ハウスは嵌められてしまいました。

 どうしても土地が欲しかった積水ハウスは、企業危機に対する意識を失ってしまったのでしょう。「私が詐欺にあうはずがない」という言葉をよく聞きますが、まさにその通り。成功目的だけを見るが故に、穴だらけの計画が見えなくなってしまう……。

 この事件は、企業が不動産取引を行う際に、どれほどのリスクを伴うかを如実に示しています。積水ハウスのような大企業でさえ、地面師たちの手口に引っかかってしまうのですから。

 気になる被害金額は、55億5千万円。主犯格をはじめ15名以上の逮捕者が出ましたが、被害金はすでに海外の口座にプールされていました。こうなると被害金がどこに流れたのか、知ることは出来ません。警察は事件に関しては介入するものの、被害金についてはその範疇ではなく、犯人が逮捕されても失ったお金は戻っては来ません。

 積水ハウス地面師詐欺事件は、企業にとって大きな経済的損失をもたらしただけでなく、社会全体にも大きな影響を与えました。

 この事件をきっかけに、日本信用情報サービス株式会社にも不動産市場に対する取引の透明性や安全性を求める企業さまから多くのお問い合わせがあり、不動産取引に対する警戒心を高めるきっかけになったように思います。

 地面師詐欺グループが使う手法は、不動産取引の複雑に入り組んだ背景を利用して行われ、真偽を見極めることが困難な場合が多いのが特徴です。

 この事件を受けて、多くの企業は不動産取引におけるリスク管理の重要性を再認識せざるを得なくなりました。専門的な確認プロセスや徹底的な調査を行う必要性、また、技術の進化に伴い、ブロックチェーン技術を用いた所有権の証明や、詐欺検出システムなど、新たな対策が求められています。一連の事件も、日本信用情報サ−ビス株式会社のJSICvr3デ−タベ−スを利用すれば未然に防げた可能性があります。

 日本信用情報サ−ビス株式会社が提供する『国内唯一の登記簿検索システム』には、犯人の実名が事件前から登録されていたのです。

 同時に、社会全体が「地面師詐欺」の手口やその影響について理解を深め、詐欺被害に遭わないように学ぶ事も必要です。何より『正しい調査で被害を未然に防ぐ』という意識が求められる時代となったのです。

 ▲日本信用情報サービス株式会社の【登記情報検索システム】サンプル画面

では、どうしたら未然に詐欺を防げたのか? なにかがおかしいと気づけたのか?

 それを見抜くポイントは『名刺』を確認し、裏を取ることです。その企業は本当に存在するのか、担当者は実在するのか、などの基本的なチェックが重要になります。

・記載された社用固定電話番号への確認

携帯電話ではなく、固定電話に連絡することで、実態が見える場合があります。

・記載された住所への訪問

 ネット検索、地図アプリでの建物の確認だけでは不十分です。取引の金額が大きい場合は実際に自分の足で見に行く、という事も、企業防衛の初動となります。

 固定電話に電話をしても出ない、通じない、電話対応が杜撰である、アポイントなしで会社を訪問したら誰もいなかった、社名の表示プレートがない(あっても簡易的なものである)などといった場合は、バーチャルオフィス・ペーパーカンパニーである可能性も否定できません。

 「たかが名刺」と侮るなかれ。名刺から詐欺の手口が見えることはたくさんあるのです。

 名刺管理システムを利用されている方も多いと思いますが、管理をするだけでは不十分だと言えます。『自分自身が実際に確認する』そんなひと手間で、見破れる詐欺があるのです。

 Netflixの「地面師たち」と「積水ハウス地面師詐欺事件」は、詐欺の巧妙さとその影響を示す重要な事例です。

 「地面師たち」が描く緊迫した状況と、実際に発生した「積水ハウス地面師詐欺事件」の現実を通じて、改めて、不動産取引におけるリスクと、その背後に潜む社会的な課題を再考する必要があります。詐欺は一企業だけでなく、広く社会に影響を及ぼす問題であり、今後も警戒を怠らず、しっかりとした企業防衛対策を講じていくことが求められるのです。

2024年10月に行われた日本信用情報サービス株式会社主催のオンラインセミナーでは「地面師詐欺事件」を扱いました。

 積水ハウス地面師詐欺事件で実際にあった手口の解説や、経緯説明をはじめ、関係会社の登記簿を公開し関係者の因果関係なども実名でより深く詳しく発表しました。さらには、東京赤坂のAPAホテル地面師詐欺事件、地面師詐欺に関わって殺人事件にまで発展したケース、その被害金額にも言及し、参加された方々から好評を頂きました。

実際にあった企業危機管理に直結する事案を基にすることで、様々な情報を共有することができ、万が一の状況に陥らないための事前対策もご提案することが出来ます。

 ここまで踏み込めるのは、日本信用情報サ−ビス株式会社だからこそです。

日本信用情報サ−ビス株式会社が提供している『JCIBWEB DB Ver3』は、新聞記事やWEB検索などの公知情報に加え、国内で唯一、警察関連の独自情報を保有しています。さらに『JCIS WEB DB Ver3』は、登記情報PDFデータをアップロードすることで、商号・役員名を全て抽出して一括検索できるシステムを構築しております。検索工数削減を可能としたシステムは、日本信用情報サービス株式会社のみが保有する機能です。

日本信用情報サービス株式会社のデータセンターでは、JCISVer3データを国内最大規模で構築しております。

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日本信用情報サービス株式会社 会社概要
代表    :代表取締役社長 小塚直志
設立    :2018年3月
事業    :企業向け反社データベースの提供、KYC,eKYC,AMLに関するコンサルティング
URL    :https://www.jcis.co.jp/
本社    :神奈川県横浜市中区山下町2番地 産業貿易センタービル9F
東京オフィス:東京都中央区日本橋室町3-3-1 E.T.S室町ビル9F
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