コラム

Column

第三者に見せてはならない情報 ~「契約者外閲覧」への警鐘~

2025年11月26日

日本信用情報サービス株式会社
情報分析部
関口美由紀

反社チェック・コンプライアンスチェックは、企業の信用を支える根幹です。日本信用情報サービスが扱うのは、実名報道に基づく一次情報で、提供先との秘密保持契約を前提に管理されています。外部流出を前提としない情報であり、一度の扱いの誤りが企業リスクへと直結する性質をもちます。 年間ごく少数ですが、「自分の名前が反社チェックデータに載っているので、消してほしい」という連絡が入ります。照会の対象となるのは、「JCIS WEB DB Ver.3」(日本信用情報サービスの反社チェック・コンプライアンスチェックデータベース)に実名が登録されている本人です。
「不起訴になっているのだから削除できるはずだ」と求めてくるケースも見られます。

不起訴であっても、捜査が行われた事実は公式記録として残ります。日本信用情報サービスは事実情報を扱う立場として、履歴の改変には応じません。理由のいかんを問わず、日本信用情報サービスの反社チェック・コンプライアンスチェック「JCIS WEB DB Ver.3」のデータを削除することは致しません。

不起訴という処分は、無罪と同義ではありません。嫌疑なしで疑いが完全に晴れたケースもあれば、嫌疑不十分や起訴猶予のように、一定の事実関係が認められつつも起訴に至らなかったケースも存在します。 この差は企業にとって無視できず、後者の場合には再発防止に向けた管理責任が問われます。事案の背景を把握し、従業員管理や取引判断へつなげていく必要も生じます。
捜査段階で記録が残っている以上、情報提供事業者が恣意的に書き換えることは適切ではありません。日本信用情報サービスが削除に応じないのは、事実情報の整合性を守るためです。



次に確認すべき点は、なぜ「掲載された本人」から連絡が入るのかという点です。
この状況そのものが深刻で、通常の運用では起こりえません。実際には、日本信用情報サービスと契約関係にある企業側から照会が行われ、その情報が本人へ伝わっているのです。契約規約を踏まえると、本来あってはならない扱われ方です。

日本信用情報サービスでは、契約時に厳格な審査を行い、統制が確実に機能している企業にのみデータを提供しています。統制が担保されなければ、反社チェック・コンプライアンスチェックという仕組みそのものが意味を失います。提供先が第三者へ情報を見せた時点で、企業側の管理体制に重大な問題があると判断し、契約解除を視野に入れた対応が必要になります。

たったひとりの扱いの甘さが、取引停止や信用不安へ直結する場合があります。日本信用情報サービスが提供しているのは『反社会的勢力』『コンプライアンス違反』のデータベースであり、この枠組みを守るためには、例外を許さないという覚悟が必要です。

反社チェック・コンプライアンスチェック「JCIS WEB DB Ver.3」は外部公開を前提とした資料ではなく、信頼関係の中だけで扱うべき情報です。取り扱いを誤った瞬間に、企業の立場は簡単に揺らぎます。契約を結んだ以上、情報の共有範囲を厳格に管理してもらわないと、仕組みそのものが成り立ちません。

「反社チェックデータに、あなたの名前が載っていたよ」
そんな話題づくりのために、日本信用情報サービスは実名を収集しているわけではありません。

反社チェック・コンプライアンスチェックは、企業の信用を支える重要な情報です。扱いを誤った瞬間に、その誤りは企業内部の統制の緩みとして表に出ます。本来見せてはならない相手へ情報が流れた時点で、重大な管理不備とみなされます。それほど繊細な情報を、契約企業へ託しているということです。

情報を守る姿勢が揺らげば、企業の信用は簡単にかたちを失います。管理体制を確かなものとして維持し続けることこそが、自社を守り、取引先からの信頼を保つ唯一の手段です。

社内で本来口にしてはならない情報が、雑談のように扱われ始めた時点で、統制は崩れたも同然です。ひとつの不用意な発言が、組織全体の信用を揺るがす引き金になります。
そんな空気が少しでも感じられる企業こそ、日本信用情報サービスのグループ会社『一般社団法人企業防衛リスク管理会』へ相談してください。危うさを放置すれば、次に揺らぐのは企業そのものです。統制の立て直しを、ここで確実に進めてください。