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【地方紙のチカラ③】反社チェック・コンプライアンスチェック情報 “検索できるか”ではなく、“検索できる情報が入っているか”

2025年7月25日

日本信用情報サービス株式会社
情報分析部
関口美由紀

形式だけの「反社チェック・コンプライアンスチェック」が企業を危険にさらす

「地方紙にも対応しています」「AIが自動で検索します」
それって本当ですか?

「地方紙にも対応しています」「AIが自動で検索します」
そうアピールする反社チェック・コンプライアンスチェックのサービスが、いまや当たり前のように存在しています。見た目のわかりやすさ、検索機能の便利さ、AIという言葉の安心感。
確かに、表現としては魅力的に映るかもしれません。

しかし実態に追ってみると、地方紙のデータが含まれていなかったり、ごく一部の情報しか登録されていなかったりするケースが非常に多く存在します。
にもかかわらず、「反社チェック・コンプライアンスチェックに有効なツール」として扱われ、何の疑問もなく企業現場に導入されているのが現状です。

肝心なのは“検索できるか”ではなく、“検索できる情報が入っているか”です。
画面に整った項目が並んでいても、その裏側に空白や抜けや漏れが潜んでいれば、企業のリスクは見逃されたままになります。

外形的には整っているように見えても、肝心の中身が空洞であれば、企業を守るどころか、危うい取引先に気づく機会さえ失われかねません。
形式に惑わされてはいけない。 まずは、そう問いかけるところから始める必要があります。

偽装される「地方紙対応」 と、実態のないサービス

「地方紙のデータを保有」と掲げる反社チェック・コンプライアンスチェックの事業者の中には、実際には自社でデータを保有していないケースがあります。検索画面に一部の情報を取り込んでいるだけでも「地方紙のデータを保有」と明記することはできます。網羅性も継続性も乏しく、形式的な“見せかけの整備”にとどまっているのにも関わらず、「地方紙のデータを保有」という文字だけに惑わされるのは、危険です。

調査の核心にあたる部分が見えず、確認もできない状態では、当然ながらリスク判断の精度は下がります。形式上の検索機能が整っていても、肝心の中身にアクセスできなければ、実務では使いものになりません。

整った言い回しや洗練された検索画面とは裏腹に、実態の伴わない“虚偽の安全宣言”が企業現場に流通していることこそ、最大の問題です。こうした誤認は、企業の判断を誤らせるだけでなく、リスクそのものを見過ごす構造を温存しかねません。

AIという看板でごまかされる中身の空洞

「AIが自動でチェックします」
その響きには最先端技術への信頼がにじんでいます。まるで、それだけで品質が保証されているかのように受け取られてしまう場面もあります。

しかし現実には、AIがどれほど高機能でも、もとになる情報データが少なければ意味を成しません。記事数が極端に少ない、地方紙や実名報道が欠落している、本文が非公開など、入力情報に欠陥があれば、どれほど優秀なAIでも“空回り”するしかないのです。

さらに問題なのは、AIによって拾われるのが、新聞記事の「見出し」だけというケースです。事件や不祥事の背景にある文脈や関係性、時系列のつながりまでは把握できず、チェックの体をなしていないこともあります。

「AIを使っている」という事実だけが独り歩きし、その中身を問う視点が置き去りにされている。そんな調査もどきが“反社チェック済み”として流通している現状は、看過できない課題です。

反社チェック・コンプライアンスチェックの本質

地方紙の紙面をきちんと確認し、過去の記事にまで遡って実態を追える体制がなければ、地方紙にしか載らない重要な情報には触れられません。そうした空白を空白のままにせず、そこに目を向ける姿勢があるかどうか。それが企業の命運を分ける場面もあるのです。

見えている情報だけで判断せず、見えにくい情報にこそ目を凝らす。その「見抜く目」と「向き合う覚悟」を持つ企業こそが、反社リスクに真正面から対峙できるのではないでしょうか。

形式ではなく実態を見る力。これこそが、反社チェックの本質であり、企業の信頼を守る最後の防壁となるのです。