コラム

Column

2025年を通して見えた 反社会的勢力と企業防衛の距離感

2025年12月24日

日本信用情報サービス株式会社
情報分析部
関口美由紀

2025年に見えた社会の空気感

今年も残すところ、数日となりました。
この一年を振り返り、心身ともに大きな支障なく過ごせたかどうか、立ち止まって考える時期に差しかかっています。

日本国内を見渡すと、明るい話題よりも、どこか落ち着かないニュースが目についた一年だった印象が残ります。
反社会的勢力が関与したとされる事件や、匿名性を盾にした犯罪が各地で報じられ、闇バイトや匿名流動型犯罪グループ(通称トクリュウ)といった言葉が、特別なものではなく日常のニュースとして扱われるようになりました。

企業活動の現場であらわになった構造的リスク

金融、不動産、雇用、ITといった分野においても、反社会的勢力との接点が問題視される事案が相次ぎ、企業や組織の管理体制そのものが問われました。
検挙や摘発に至ったケースはあるものの、犯罪の仕組み自体が解消されたとは言い切れず、構造的な課題が表面化した年だったと言えます。

このようなニュースが重なった2025年を経て、企業危機管理や反社対応を「特別な対策」としてではなく、日常的な企業防衛の一部として捉える重要性が、改めて浮き彫りになりました。
来年も、表に出る前の兆しを見逃さず冷静に備えを積み重ねていく姿勢が、企業を守る力になります。

反社チェック・コンプライアンスチェックの業界全体に漂う危うさと違和感

反社チェック・コンプライアンスチェックの分野においても、状況は決して楽観できるものではありません。
この一年、日本信用情報サービスは、業界全体に対して繰り返し警鐘を鳴らしてきました。
データの扱い方、情報の裏取り、調査工程の省略化など、見過ごせない動きが続いているためです。

しかし、業界の空気が大きく変わったとは感じませんでした。
新しい技術や仕組みが次々と打ち出される一方で、調査の本質に対する理解が深まったとは言い難い現状が続いています。

反社チェック・コンプライアンスチェック・AI活用が進む中で見失われがちな前提

近年は、AIによる反社チェック・コンプライアンスチェックが注目を集めています。
作業効率やスピードを理由に導入を検討する企業も増えていますが、ここで見落としてはならない前提があります。
AIは、ゼロから事実を掘り起こす存在ではありません。
与えられた情報を整理し、関連性を抽出する仕組みであり、元となるデータが乏しければ、導き出される結果も限定的になります。

反社会的勢力の実名や関係性は、断片的な情報から自然に浮かび上がるものではありません。
少ない材料から正確な判断にたどり着くことは難しく、情報の厚みと継続的な収集体制が不可欠です。

判断を支えるのは『他社では絶対保有していない情報』という土台

日本信用情報サービスが重視してきたのは、地方新聞を含む情報の蓄積です。これは、他の反社チェック・コンプライアンスチェックデータを扱う他社にはない強味です。
全国紙では扱われない事件や人物の動きが、地方紙には詳細に記録されています。特に、反社会的勢力に関する有力情報に関しては、地方新聞由来のものが約80%を占めています。
日本信用情報サービスのデータベースは、世界のインテリジェンス企業から高い評価を受けるとともに、多くの有名企業からの問い合わせや、他社サービスからの乗り換えによって支えられてきました。

企業危機管理の総合リスク管理を備えた企業として、効率や自動化を否定するつもりはありません。
ただし、基盤となる情報の質と量を軽視したままでは、反社チェック・コンプライアンスチェックの信頼性は維持できないのです。
この一年を振り返る今だからこそ、何を拠り所に判断してきたのかを、あらためて見直す必要があるのではないでしょうか。

年の瀬にあらためて問われる反社勢力への判断の軸

反社会的勢力を巡る問題は、突発的な事件としてではなく、社会や企業活動の隙間に入り込み、静かに広がっていくものです。
2025年は、そのことを多くのニュースが繰り返し示していました。

危機は、表に現れた時点で初めて対処すればよいものではありません。
情報の集め方、確認の深さ、判断の根拠。
日々の業務の中で当たり前のように行っている選択の積み重ねが、数年後に企業の明暗を分ける場面もあります。

企業防衛の基盤としての反社チェック・コンプライアンスチェック

日本信用情報サービスは、反社チェック・コンプライアンスチェックを一時的な対応や流行の手法としてではなく、企業防衛の基盤として位置づけてきました。
派手さや効率だけを追うのではなく、事実を積み重ね、信用情報を扱う責任を最重視して、下記の内容を備えています。

  1. 反社コンプライアンスチェックと警察関連情報のデータ
  2. 同姓同名の判断ができる調査機関
  3. 社内のリスクマネジメントで現場対応可能なスキルを持ったスタッフ
  4. 業務内容はホームページ上で表示

世界トップクラスの企業危機管理を担う立場として、日本信用情報サービスは、これらを当然の責務としてきました。

年の終わりは、過ぎた出来事を振り返るだけでなく、これまで何を拠り所に判断してきたのかを見直す機会でもあります。
日本信用情報サービスは、来年も、表に出る前の兆しに向き合い続ける姿勢を軸に、企業防衛を支えていきます。