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コラム

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ミナミの地面師③ 「名前を検索して終わり」にしない企業防衛

日本信用情報サービス株式会社
情報分析部
関口美由紀

前回ご紹介したように、大阪・ミナミ地面師事件の主犯格とされる福田裕については、2014年時点で「有印私文書偽造・同行使容疑で逮捕、送検」という情報が、日本信用情報サービスの反社チェック・コンプライアンスチェックデータベース『JCIS WEB DBⓇ Ver.3』に登録されていました。

日本信用情報サービス 反社チェックデータベース コンプライアンスチェック 実際の画面

2014年の文書偽造事件と、2025年の地面師事件。一見すると、時期も内容も異なる別々の事件です。しかし、不動産取引という視点で見れば、この二つは決して無関係な出来事ではありません。

地面師詐欺では、本人確認書類、委任状、印鑑証明書、契約書など、取引相手を信用させるための文書が重要な役割を果たします。そう考えると、過去に文書偽造事件で逮捕、送検された人物が、大型不動産取引の関係者として現れたという事実は、単なる過去の犯罪履歴ではなく、現在の取引リスクを考える上で重要な判断材料になります。

2014年の出来事は、一つの「点」にすぎません。しかし、その点を2025年の地面師事件と結び付けたとき、企業が向き合うべきリスクが見えてきます。過去の情報を個別の事案として保管するだけでなく、現在の取引と結び付け、一つの「線」として読み解くこと。それが企業危機管理に求められる視点です。

反社チェック・コンプライアンスチェックでは、対象者の名前を検索し、該当する情報の有無を確認するだけでは十分とは言えません。検索結果は、あくまでも出発点です。

本当に重要なのは、検索結果に表示された人物が目の前の取引相手と同一人物なのか、過去の事案が今回の取引とどのように関係するのかを検証することです。その結果を踏まえ、契約を進めるのか、追加調査を行うのか、それとも取引を見送るのか。こうした判断まで含めて初めて、反社チェック・コンプライアンスチェックは企業防衛として機能します。

日本信用情報サービス

もちろん、過去に逮捕や送検の情報が確認されたという事実だけで、現在の犯罪行為を断定することはできません。過去の情報を機械的に取引拒否へ結び付けるのではなく、事案の内容や取引との関連性、対象者の同一性を丁寧に確認し、企業として適切な判断を下す必要があります。

一方で、「昔の事件だから」「今回の取引とは関係ないだろう」と過去の情報を切り離してしまえば、本来見えていたはずの危険な兆候を見落としかねません。情報の価値は、新しいか古いかだけで決まるものではなく、その内容が現在の取引に何を示しているのかを読み解いてこそ、企業危機管理に生かされます。

現代の地面師は、偽名や架空の身分だけを使って近づいてくるとは限りません。本名を名乗り、実在する企業や人物を利用し、ごく普通の取引相手として商談の場へ現れます。名刺や本人確認書類がそろい、専門家が同席していたとしても、それだけで取引の安全性が保証されるわけではありません。

JCIS WEB DBには地面師情報も登録

だからこそ、目の前の人物や契約書類だけでは見えない「過去の情報」が重要になります。今回の事件について、被害企業が福田裕の過去をどこまで確認していたのかは分かりません。しかし、少なくとも日本信用情報サービスの『JCIS WEB DBⓇ Ver.3』には、事件が発生する11年前から、取引上の判断材料となり得る情報が登録されていました。

反社チェック・コンプライアンスチェックで本当に問われるのは、システムの検索件数や検索スピードではありません。必要な情報へ確実に到達し、その意味を読み解き、企業の意思決定へ反映できるかどうかです。

単に「名前を検索した」という事実だけでは、企業を守る仕組みは完成しません。過去に残された一つひとつの「点」を、現在の取引リスクという「線」につなぎ、適切な判断へ生かしていくこと。それこそが反社チェック・コンプライアンスチェックの本質であり、大阪・ミナミ地面師事件が企業に投げ掛けている最大の教訓ではないでしょうか。


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