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自治体・公共団体はどうしている? 公共調達における反社排除の実務

2026年9月10日
日本信用情報サービス

公共事業の入札や契約において反社会的勢力の排除は今や必須の取り組みとなっています。民間企業では既に一般化している反社チェックですが税金を原資とする公共調達においてはより厳格な対応が求められます。本コラムでは自治体や公共団体が実際にどのような仕組みで反社会的勢力を排除しているのかその実務の全体像を解説します。

■公共調達で反社排除が重視される理由

自治体や公共団体による調達は国民・住民の税金を財源としています。そのため公正性と透明性の確保は絶対的な要請です。もし反社会的勢力が公共事業に関与すれば暴力団等への資金流入を許すことになり、結果として住民の利益を損なうことになります。

また公共事業は地域経済に大きな影響を与えます。反社会的勢力が公共事業を足がかりとして地域社会に浸透することを未然に防ぐことは、地域の安全と健全な経済活動を守る上で極めて重要になります。こうした背景から公共調達における反社排除は単なる形式的な手続きではなく、公共の利益を守るための実質的な取り組みとして位置づけられています。

■法的根拠と制度の整備状況

公共調達における反社排除の法的根拠は複数の法令や指針に基づいています。国レベルでは「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(平成19年政府指針)が基本的な枠組みを示しており、この指針を踏まえて各省庁や自治体が具体的な措置を講じています。

地方自治体においては多くの団体が条例や規則・要綱等を整備し、入札参加資格や契約内容に反社排除条項を盛り込んでいます。東京都や大阪府など主要自治体では暴力団排除条例に基づく排除措置が明確に定められておりこれらの先進事例が全国の自治体に波及する形で制度が広がってきました。

契約書には反社会的勢力排除条項が標準的に組み込まれるようになり、契約締結後に反社会的勢力との関係が判明した場合には契約解除や損害賠償請求ができる仕組みが構築されています。

■入札参加資格審査における反社チェック

公共調達における反社排除の最初の関門は入札参加資格の審査段階です。多くの自治体では入札参加資格申請時に事業者から誓約書の提出を求めています。この誓約書では申請者自身が反社会的勢力でないこと、反社会的勢力と密接な関係を有していないこと、さらには下請業者等についても反社会的勢力を使用しないことなどを誓約させます。

誓約内容に虚偽があった場合や誓約に反する行為が判明した場合には入札参加資格の取消しや指名停止などの措置が取られます。この仕組みにより事業者側にも自主的なコンプライアンス体制の構築を促す効果があります。

審査にあたっては警察との連携が重要な役割を果たします。多くの自治体では都道府県警察と協定を結び、暴力団等に該当するか否かについて照会を行う体制を整えています。警察からの回答に基づいて該当する事業者は入札参加資格を付与されない、あるいは既に付与されている資格が取り消されることになります。

■契約締結時の具体的措置

入札参加資格をクリアした後も個別の契約締結時に改めて反社排除の確認が行われます。契約書には必ず暴力団排除特約条項が盛り込まれており、契約当事者が反社会的勢力でないこと反社会的勢力を利用しないこと反社会的勢力に利益を供与しないことなどが明記されます。

特約条項にはこれらの表明保証に違反した場合の措置が詳細に定められています。具体的には自治体側は催告なしに契約を解除できること、違約金や損害賠償を請求できること、一定期間入札参加資格を停止できることなどが規定されています。これにより契約後の段階でも実効性のある排除措置を確保しています。

また大規模な工事や業務委託契約では下請業者や再委託先についても反社チェックの対象とすることが一般的です。元請業者に対して下請業者等が反社会的勢力でないことを確認する義務を課し、違反が判明した場合には下請契約の解除を求めることができる条項を設けています。

■警察との連携体制

公共調達における反社排除の実効性を高める上で警察との緊密な連携は不可欠です。自治体が独自に反社会的勢力かどうかを判断することは困難であり、警察が保有する情報に基づく照会制度が重要な役割を果たしています。

多くの自治体では都道府県警察の暴力団対策部門と「暴力団排除に関する合意書」等を締結し、入札参加資格申請者や契約相手方について照会できる体制を構築しています。照会できる範囲は申請者本人だけでなく役員や実質的な経営者さらには主要な株主に及ぶ場合もあります。

警察からの回答は該当・非該当の形で行われ、具体的な理由や内容は明らかにされないのが通常です。これは警察が保有する情報の性質上やむを得ない面があります。照会結果に基づいて該当すると判明した場合には自治体は入札参加資格の不付与や取消しの措置を取ることになります。

■契約履行段階でのモニタリング

契約締結後も反社会的勢力の排除に向けた取り組みは継続します。契約期間中に受注者と反社会的勢力との関係が新たに生じた場合や判明した場合に備えてモニタリング体制を整備することが重要です。

工事現場や業務遂行の過程で不審な動きがないか通報窓口を設置している自治体もあります。また下請業者の変更届出時には新たな下請業者についても反社チェックを実施する運用が一般的になっています。

契約履行中に反社会的勢力との関係が判明した場合に自治体は直ちに契約解除の手続きに入ります。工事が中断することによる住民への影響も考慮しなければなりませんが公共調達における原則を守ることが優先されます。解除後は違約金の請求や入札参加資格の停止措置を講じ再発防止を図ります。

■実務上の課題と対応

公共調達における反社排除にはいくつかの実務上の課題も存在します。まず中小規模の自治体では専門的な知識を持つ職員の不足や警察との連携体制の構築が十分でないケースがあります。このため広域連携による情報共有や都道府県による支援体制の整備が進められています。

また反社会的勢力の定義が必ずしも明確でない場合があることも課題です。暴力団構成員や準構成員は比較的判断しやすいものの”いわゆる”「共生者」や「関係者」については判断が難しいケースがあります。各自治体では警察からの情報や具体的な行動態様を総合的に判断して対応しています。

さらに個人情報保護との関係も慎重な検討が必要です。警察への照会や情報の取扱いにあたっては個人情報保護条例等との整合性を確保しながら適正な手続きを踏むことが求められます。多くの自治体では照会について本人の同意を取得する方式を採用し法的リスクを軽減しています。

■反社排除の実効性を高めるために

制度を形式的に整備するだけでなく実効性を高めるための継続的な取り組みが重要です。自治体職員に対する研修を定期的に実施し反社会的勢力の手口や最新の動向についての理解を深めることが必要です。

また建設業界をはじめとする関係業界との協力関係の構築も欠かせません。業界団体と連携して会員企業に対する啓発活動や自主的なコンプライアンス体制の整備を促すことで業界全体での反社排除の取り組みが進みます。

事例の共有も有効な手段で。契約解除に至った事例や未然に排除できた事例などを自治体間で共有することでより実践的なノウハウが蓄積されます。個人情報や捜査情報に配慮しながら適切な形での情報交換が行われています。

■今後の展望

公共調達における反社排除の取り組みは今後さらに進化していくことが予想されます。デジタル技術の活用によりより効率的な審査体制の構築が可能になるでしょう。入札参加資格のデータベース化や警察との情報連携のシステム化などが進めば審査の迅速化と精度向上が期待できます。

またSDGsやESGといった国際的な潮流の中で公共調達におけるコンプライアンスの重要性はますます高まっています。反社排除はその中核をなす取り組みとしてより一層の充実が求められるでしょう。

民間企業においても取引先審査の厳格化が進んでいます。公共調達での反社排除の仕組みは民間における取り組みとも連動しながら社会全体での暴力団排除の実効性を高めることに寄与しています。

■よくある質問(FAQ)

Q:公共調達で反社排除が重視される理由は何ですか?

自治体や公共団体による調達は国民・住民の税金を財源としているため公正性と透明性の確保は絶対的な要請です。反社会的勢力が公共事業に関与すれば暴力団等への資金流入を許すことになり住民の利益を損なうためです。また公共事業を足がかりとして地域社会に浸透することを未然に防ぐことは地域の安全と健全な経済活動を守る上で極めて重要です。

Q:入札参加資格審査ではどのような反社チェックが行われますか?

多くの自治体では申請者から誓約書の提出を求め、反社会的勢力でないこと・密接な関係を有していないこと・下請業者等にも使用しないことなどを誓約させます。また都道府県警察と協定を結び申請者本人だけでなく役員・実質的な経営者・主要株主についても照会できる体制を構築しています。

Q:契約書にはどのような反社排除条項が盛り込まれますか?

契約当事者が反社会的勢力でないこと・反社会的勢力を利用しないこと・反社会的勢力に利益を供与しないことなどの表明保証条項が明記されます。違反した場合は催告なしの契約解除・違約金・損害賠償請求・一定期間の入札参加資格停止などの措置が規定されています。

Q:公共調達における反社排除の実務上の課題は何ですか?

主な課題として①中小規模自治体での専門知識を持つ職員の不足と警察連携体制の構築困難、②「共生者」「関係者」など反社会的勢力の定義が不明確なケースへの対応、③個人情報保護条例等との整合性確保、の3点が挙げられます。広域連携による情報共有や本人同意取得方式の採用などで対応が進められています。

■まとめ

自治体や公共団体における反社会的勢力の排除は入札参加資格審査から契約締結・履行段階に至るまで一貫した取り組みとして実施されています。警察との連携を基軸としながら誓約書の徴求・契約書への排除条項の明記・違反時の厳格な措置といった多層的な仕組みにより実効性を確保しています。

公共調達の透明性と公正性を守り税金の適正な使用を確保するためには形式的な対応に終わらせることなく実質的な排除を実現することが重要です。自治体職員の意識向上・関係機関との連携強化・そして継続的な制度の見直しを通じてより強固な排除体制を構築していくことが求められています。

反社会的勢力の排除は地域社会の安全と健全な経済活動を守るための基盤です。公共調達における取り組みはその最前線として今後も重要な役割を果たし続けるでしょう。

記事出典元:JRMC(日本リスク管理センター)コラム
自治体・公共団体はどうしている? 公共調達における反社排除の実務
※本記事の出典元であるJRMC(日本リスク管理センター)は、日本信用情報サービス株式会社(JCIS WEB DB® Ver.3)の販売代理店としてサービス提供を行っています